エンビロン/Dr.フェルナンデス/ケミカルピーリング・・・
ビタミンジャングル6
レチノール誘導体(ビタミンA)が入っているエンビロンの製品の記事を書きながら、エンビロンの創始者であるデスモンド・フェルナンデスドクターの唱えていることを調べています。
調べるうちに、現在のコスメ界で製品が拠り所とする考え方の多くにDr.フェルナンデス氏とのかかわりが見えてくることに気が付きます。例えば、化粧品成分としてビタミンAやC、Eを用いる事、二―ドリングによる創傷治療、ペプチド(おおよそ3つのアミノ酸が重合した程度の小さなペプチド)の成長促進因子としてのスキンケア利用など、Dr.フェルナンデス氏がかかわっていて、広く日本で用いられている考え方が見られます。ちょっとびっくりです。
さて、二―ドリングとエンビロン製品に関しては、すでに簡単な記事がありますが、今回は、エンビロンのトーナーに含まれている乳酸をもちいたピーリングについて雑学したいと思います。
さらには、トレチノイン酸とは何か、ダーマローラーによる二―ドリングの実際なども、以前の記事と重なることがあるかもしれませんが、話題として取り上げていこうと思っています。
AHAとは何か
AHAは特定の酸の種類
AHAってアルファヒドロキシ酸のことで、ある特徴を持った物質群の呼び方です。今日の話の主役、乳酸はアルファヒドロキシ酸のひとつです。
酸っていうのは、塩酸、硫酸とかいう酸と同じで水に溶けて酸性を示す物質と考えていいのですが、AHAはそのなかでも生物と深いかかわりのある【有機酸】と呼ばれるものです。
【有機酸】って例えば?
酢酸・グルタミン酸・乳酸・核酸・酒石酸・グリコール酸・パルミチン酸・・・・有機化合物で酸である物はたくさんあり、みなさんもこういった名前は聞いたことがあるのでは。
馴染みにくいとは思うのですが、どんな原子が結びついてできているのかを下に図でご紹介します。
ヒドロキシ酸とは
で、これを見ると、有機酸とよばれるものにはCOOH(カルボキシ基といいます)を持っているものが多いのに気が付きます。
さらに、図中に青でOH(ヒドロキシ基といいます)をマークしてありますが、COOHとOHを併せ持っているものを、【ヒドロキシ酸】というのです。
このヒドロキシ酸のうち以下のようにCOOHが結合しているCにOHが結合しているのが
アルファヒドロキシ酸といいます。乳酸はアルファヒドロキシ酸です。
COOHが結合しているCのとなりのCにOHが結合しているのが
ベータヒドロキシ酸といいます。サリチル酸はベータヒドロキシ酸です。
上のαヒドロキシ酸が乳酸です。βヒドロキシ酸の例がサリチル酸です。
AHAとピーリング
そして、このヒドロキシ酸ですが、皮膚を再生するような治療ではかなり以前から用いられています。火傷の傷の治療やひどい皮膚のトラブルがあるときに、ヒドロキシ酸によって皮膚の表面を一旦溶かして除去し、それを再生するようなプロセスで治すのに用いられているのです。
実際の医療場面では、現在化粧品で用いられている濃度よりはるかに高い濃度で用いられています。医師のコントロール下で行う場合のヒドロキシ酸の濃度は20パーセント程度もあるようです。
これに対して、美容目的で用いられる場合は、低濃度(1パーセント以下です。)で使われ、
Dr.フェルナンデス氏はサリチル酸やグリコール酸のような強い酸を用いるのではなく、
弱めの乳酸やクエン酸を用いて穏やかに角層に働きかけて用いる事を勧めています。
エンビロンのモイスチャーシリーズのトーナー、ダーマラックローションなどに含まれているのは、この乳酸またはクエン酸となっています。また、乳酸の塩やクエン酸の塩をあわせて加える事でpHを一定値にキープするような工夫もされているように思います(緩衝効果:弱酸と弱酸の塩を定比で混合することでpH(酸性度)をコントロールできる。)。
上の写真の一番左がモイスチャーシリーズのトーナーです。上記はモイスチャー1セット。むっちゃオススメ。
つまり、エンビロンのトーナーはとてもソフトなケミカルピーリングを行うコスメだと言えると思います。
ちなみに、外国製のピーリングコスメでは、濃度が低いながらも、サリチル酸やグリコール酸を用いたものが存在し、入手できれば使うことが出来ます。エクスビアンス製品などは、ゆうらくも試してみたことがあり、実際にピリピリして肌が赤くなることも分かりました。(最初はビビりました(笑)。)
二―ドリングとのコンビネーション
古い角層を除去してターンオーバーの力に頼って肌をリフレッシュする方策はピーリングだけではありません。Dr.フェルナンデス氏もピーリングと二―ドリングを併用することを勧めています。
二―ドリングとは短い針を用いて皮膚に侵襲的でない(破壊的でない)傷を創りターンオーバーを促す方法です。医療用では1~3mmという長い針を用いて火傷痕の治療などにも使われているようですが、Dr.フェルナンデス氏はホームケア用途に0.2㎜程度の二―ドリングが出来るシステムを用意しています。Dr.フェルナンデス氏も言っていますが、この長さの針では化粧品成分の浸透力を高める効果が主であり、その目的でエンビロンサロンではイオン導入も行われているようです。
そして、エンビロンは、化粧品成分の浸透力を高めるために、二―ドリングを行う前にトーナーを用いて角層を解すことを勧めています。
解してからしっかり穴をあけてビタミンや保湿成分を角層の向こう側に届けようという事ですね。
医療分野で効果のはっきりしているものを使って、できるだけ穏やかな方法でスキンケアしようというDr.フェルナンデス氏の考え方がエンビロンでは貫かれていると思います。
この精神は、刺激の強い形のビタミンAではなくて穏やかなエステル型のものだけを含めているという処方にも通じていると感じています。
トーナーの使い方のヒント
さて、今回は長々と理屈っぽい話しにお付き合いくださり、ありがとうございました。
終わりになりますが、エンビロンのトーナーなどAHA含有製品を使うときのヒントをふたつ。
肌に刺激を受ける事による赤みなどの反応が出たら、まずはトーナーを省いてお手入れをしてみましょう。それで赤みなどが出てこなくなったら、トーナーの酸性が少し強いかもしれません。
その場合、トーナーを使う頻度を少なくしたり、トーナーを使った後に水で洗う操作を入れてからセラム、クリームと進んでみてください。なお、酸性が強いから中和しようなどといって重曹などでケアをしては絶対いけません。
トーナーとしてはCクエンスのトーナーはAHAは入っていません。モイスチャーシリーズのトーナーでなく、こちらを使う手もあります。なおちゃんも使ってみて確認しています。
ついでに、ビタミンAが含まれる製品で、ビタミンCを同時に含むものの場合、肌がカサつく感じがしたら、それは保湿操作を加えると良いです。ビタミンは乾燥を呼ぶと覚えておきましょう。この点についてはレチノールの記事(簡単にはすでにビタミンジャングル3の記事で触れましたが)を書く予定ですが、そこでもまた触れたいと思います。
お楽しみに。
ゆうらく拝
アイキャッチ画面の分子模型は左が乳酸、右がグリコール酸です。ちなみに乳酸の化学式はC3H6O3です。これを、C3(H2O)3と書けるなあ~と喜んでる僕は変ですかね~(笑)